全訳 漢辞海 |戸川 芳郎
全訳 漢辞海
戸川 芳郎
三省堂 刊
発売日 2005-10
改訂を経て、さらに優れた辞書に 2005-11-05
『漢辞海』は、初版の段階で既に、「漢字を和訓に置き換えるのではなく、漢語(Chinese word)として捉え」た辞書として、画期的なものであった。それが今回の改訂を通じて、さらに優れたものとなっている。
最新の表外漢字字体表・新JIS漢字・新人名漢字への対応や書下し文の附記など、様々な改訂がなされているが、その中でも、「編者があらためて全出典にあたり直し、つぶさに再検討」が行われたことは、実に驚くべきことであり、その学問に対する真摯な姿勢に対して、敬意を表せずにはいられない。その結果として、「『漢語大字典』『漢語大詞典』などにも記述のない語義を掲げ」「我が国の先行辞書の誤りを引き継いだ語義を、出典の慎重な解読によって訂正し」「先行辞書のいずれにもない出典をあげること」が実現できていると言うだけでも、十二分にこの第二版の特異性が知られるであろう。
これまで、辞書の良し悪しを、掲載されている熟語数で判断するような向きが少なからず見られたが、この辞書の出現によって、その蒙昧さが浮き彫りになると共に、個々の語を慎重に取り扱うことの重要性が明らかになったのではないだろうか。
ただ惜しむらくは、新情報の掲載の為に、初版にあった例文が少なからず削られていることである。やむを得ない事なのかもしれないが、やや頁数が増えても、貴重な情報を残してほしかったと思う。また、書下しのスペースを例文に充てた方が良かったのでは、と疑問に思わなくもない。
だが、このような点を差し引いて考えても、やはりこの一冊が、漢文読解の為の非常に強力な工具書となってくれるであろうことは間違いない。具眼の士が、この辞書の意義を正確に把捉し、自身の読書に活用してくれることを、切に望む。
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